プッシュ・モディファイアにウェイトマップを適用する
Category : DAZ Studio 4
DAZ Studio 4.5で搭載された機能にプッシュ・モディファイア(Push Modifier)があります。オブジェクトを膨らませる(頂点を法線方向へ移動する)機能で、ジオメトリシェルと組み合わせて使われたりしました。
この機能、オフセットプロパティ(Offset Distance)を調節することで膨らませる度合いを調整できるのですが、適用したオブジェクト全体に均一にかかってしまうという点で用途の限られるものでした。
ところが先日のバージョンアップ(4.6.3.50)で、このプッシュ・モディファイアの効果をウェイトマップで調節できるようになったのです。つまり、全体を均一に膨らませるのではなく、ウェイトマップを使って膨らませる場所を限定できるようになったということです。
そこで今回は、このウェイトマップド・プッシュ・モディファイアの使用例として、フィギュアに衣服を着せたときの肌の突き破り(Poke through:ポークスルー)を修正する方法をご紹介したいと思います。

■ポークスルーを補修する方法
ポークスルーを補修する方法としては、従来からさまざまな方法が試され、あるいはDAZ Studioの機能として搭載されてきました。大げさに言うと、フィギュアの進化の歴史はポークスルーとの戦いの歴史でもあったのです!!
それを整理する意味でも、ここでさまざまなポークスルー補修法をご紹介していきます。
※DAZ Studioの機能だけで実行できる方法に限ります。
(A)衣服に用意された調整モーフを使う
衣服によってはAdjustmentグループやFixグループなどとして、衣服を肌から浮かせたり、座りポーズに合わせた変形をさせるモーフが用意されていることがあります。
またこれと似た方法で、フィギュアのシェイプ変化に対応するモーフを衣服だけ過剰に調節するというものもありますが、基本的に自動でモーフ・パラメータが連動するようになっているDAZ Studioでは使われません。
(B)デフォーマを使う
オブジェクトのメッシュの限られた範囲を変形させることができるデフォーマ(D-Form)を衣服に適用し、ポークスルーしてしまっている部分のメッシュを少し浮かせてやる方法です。従来は球形範囲のみでしたが、DAZ Studio 4.6ではウェイトマップによる範囲指定が可能になっています。
デフォーマについてはこちらの記事をご参照下さい。
(C)スムージング・モディファイア(Smoothing Modifier)を使う
DAZ Studio 4で搭載され、最近ではストアの衣服でも最初からかかっていることが多いモディファイアで、フィギュアと衣服の衝突判定のようなものを行うことで、衣服がフィギュアのメッシュにもぐらないようにする方法です。
衣服全体にかかり、どこにポークスルーが発生したか気にすることなく自動で防止してくれるのが便利です。
スムージング・モディファイアについてはこちらの記事をご参照下さい。
(D)プッシュ・モディファイア(Push Modifier)を使う
DAZ Studio 4.5で搭載されたモディファイアで、オブジェクトの頂点を法線方向へ移動させる効果があります。従来は全体に均一にかけるものでしたが、先日のバージョンアップによりウェイトマップによる効果範囲の指定ができるようになりました。
■ポークスルー補修法の比較
スムージング・モディファイアは便利なものですが、万能ではありませんでした。衣服のメッシュ密度よりも小さな突起には反応しなかったり、衣服の上下から挟み込まれると逆にポークスルーが発生してしまったり、両方含めて補修しようとしたりします。
自動で作用する分、細かい調節が効かないのです。
バージョンアップ項目にプッシュ・モディファイアにウェイトマップでの範囲指定ができるようになったというのを見つけて私が思いついたのは、ポークスルーの補修に使えないだろうかということでした。
プッシュ・モディファイアは全体を均一に膨らませるモディファイアですが、これにウェイトマップを使ってポークスルーしてしまっている部分だけにかければ良いのではということです。
今回は『Mila Dress for Genesis 2 Female(s)』を例にしました。

この衣服には最初からスムージング・モディファイアがかかっており、ポークスルーがなるべく起きないようにしてあります。
次の画像からはわかりやすいようにビューポートのDrawstyleをSmooth Shadedにし、肌を赤く色付けしてあります。
・ポークスルーに対処していない状態

薄い感じの生地の衣服ですので、ポーズによってはポークスルーが起きてしまいます。
この状態に各ポークスルー補修法を使うと、どの程度補修できるのかを見てみましょう。
・補修モーフを使った状態

FBMThinkenというモーフが用意されており、ShapingタブまたはParametersタブでそのプロパティを調節することで、全体的に衣服が身体から浮くようになっています。
ポークスルーは補修できますが、他の部分でも肌と衣服の間の隙間が広がり、肩ひもまで浮いてしまうのが目立ちます。
・スムージング・モディファイアをかけた状態

ポークスルーが起きている箇所を自動的に補修してくれます。
※この衣服はこの状態がデフォルトです。
ただ、腰に手を当てたポーズだったりすると、上の画像のように指に押されてポークスルーが起きてしまったり、下の画像のように指も含めて衣服に覆われてしまったりします。

・従来のプッシュ・モディファイアをかけた状態

全体的に膨らむため、衣服のふちや立体的な(メッシュによる)装飾部分、肩ひもなどのボリュームが増してしまっています。この、「プッシュ・モディファイアをかけた状態」と「補修モーフを使った状態」の違いは、その特徴を知る上で重要です。
・ウェイトマップド・プッシュ・モディファイアをかけた状態

プッシュ・モディファイアをポークスルーが起きている部分に限定してかけることで、丁寧な補修をすることができます。
ただし、プッシュ・モディファイアの特性から衣服のふちや立体的な装飾部分の補修はできません。
■ウェイトマップド・プッシュ・モディファイアを使ったポークスルー補修法
では実際に、ウェイトマップを使ったプッシュ・モディファイアを衣服に適用する手順をご紹介します。
途中の画像にはポイントを分かりやすくするためにビューポートのDrawStyleをSmooth Shadedにしたものがあります。

最初は上の画像のような状態です。腰の左側とお尻付近にポークスルーが起きています。
※すでにスムージング・モディファイアをオフにしてあります。
(1)衣服をSceneタブなどで選択した状態で、メインメニューから Create > New Push Modifier Weight Node を実行します。

※すでに衣服にスムージング・モディファイアが適用されていた場合は、Parametersタブでそれ(Enable Smoothing)をオフにしておきます。
(2)オプションウィンドウが出現しますので、そのままAcceptボタンをクリックします。

「Push Modifier Weight Node」が衣服にペアレントされた状態で作成されますので、Sceneタブでそれが選択されていることを確認しておきます。

(3)メインメニューから Tools > Node Weight Map Brush を実行してウェイトマップブラシツールを装備します。

(4)その状態でTool Settingsタブを開くとウェイトマップ関係のプロパティや、ブラシのオプションが表示されます。そこで、下段のWeight Mapsタブの「Add Map」ボタンをクリックします。

オプションウィンドウが出現しますが、そのままOKボタンをクリックします。

これでプッシュ・モディファイアにウェイトマップが割り当てられ、ビューポート上の衣服がその効果で膨らみます(ウェイトマップが全て100%で塗りつぶされるため)。


(5)ビューポート上で右クリックをして出現するメニューから Geometry Selection > Select All を実行します。

これで衣服のポリゴン全部が選択されます。

(6)ビューポート上で右クリックをして出現するメニューから Weight Editing > Fill Selected を実行します。

塗りつぶすウェイトを設定するウィンドウが出現しますので、0.0%にしてAcceptボタンをクリックします。

これで選択したポリゴンがウェイト0%で塗りつぶされ、膨らんでいた衣服が元に戻ります。

(7)ビューポートの衣服の上でマウスドラッグすることでウェイトマップを描くことができますので、ポークスルーが起こっている場所を塗ります。
※ウェイトマップ・ブラシツールのブラシオプションなどについてはこちらの記事をご参照下さい。

弱めのブラシで滑らかになるように塗り重ねていくのは難しいので、強めのブラシでざっくりと塗り、それをスムースブラシやスムージング(Weight Editing > Smooth Selected)で滑らかにならすのがオススメです。
※初期設定ではウェイトが高くなるにつれて [黄→青→赤]と色が付き、ウェイトが高いほどプッシュ・モディファイアの効果が強くかかることになります。

(8)元のカメラから見て変に膨らんでいたり、ポークスルーが残っていたりしないことを確認します。
そのままでは少し膨らみすぎていたので、衣服を選択してParametersタブのGeneral > Mesh Offset > PushModifier (ウェイトマップ名)の数値を0.6に下げました。このプロパティはウェイトマップ全体の強度に掛け合わせられるようです。

■今日の一枚
ウェイトマップド・プッシュ・モディファイアで補修することで、無事衣服のポークスルーも消すことができましたので、レンダリングして仕上げました。

今回の画像の素材はこちら
この機能、オフセットプロパティ(Offset Distance)を調節することで膨らませる度合いを調整できるのですが、適用したオブジェクト全体に均一にかかってしまうという点で用途の限られるものでした。
ところが先日のバージョンアップ(4.6.3.50)で、このプッシュ・モディファイアの効果をウェイトマップで調節できるようになったのです。つまり、全体を均一に膨らませるのではなく、ウェイトマップを使って膨らませる場所を限定できるようになったということです。
そこで今回は、このウェイトマップド・プッシュ・モディファイアの使用例として、フィギュアに衣服を着せたときの肌の突き破り(Poke through:ポークスルー)を修正する方法をご紹介したいと思います。

■ポークスルーを補修する方法
ポークスルーを補修する方法としては、従来からさまざまな方法が試され、あるいはDAZ Studioの機能として搭載されてきました。大げさに言うと、フィギュアの進化の歴史はポークスルーとの戦いの歴史でもあったのです!!
それを整理する意味でも、ここでさまざまなポークスルー補修法をご紹介していきます。
※DAZ Studioの機能だけで実行できる方法に限ります。
(A)衣服に用意された調整モーフを使う
衣服によってはAdjustmentグループやFixグループなどとして、衣服を肌から浮かせたり、座りポーズに合わせた変形をさせるモーフが用意されていることがあります。
またこれと似た方法で、フィギュアのシェイプ変化に対応するモーフを衣服だけ過剰に調節するというものもありますが、基本的に自動でモーフ・パラメータが連動するようになっているDAZ Studioでは使われません。
(B)デフォーマを使う
オブジェクトのメッシュの限られた範囲を変形させることができるデフォーマ(D-Form)を衣服に適用し、ポークスルーしてしまっている部分のメッシュを少し浮かせてやる方法です。従来は球形範囲のみでしたが、DAZ Studio 4.6ではウェイトマップによる範囲指定が可能になっています。
デフォーマについてはこちらの記事をご参照下さい。
(C)スムージング・モディファイア(Smoothing Modifier)を使う
DAZ Studio 4で搭載され、最近ではストアの衣服でも最初からかかっていることが多いモディファイアで、フィギュアと衣服の衝突判定のようなものを行うことで、衣服がフィギュアのメッシュにもぐらないようにする方法です。
衣服全体にかかり、どこにポークスルーが発生したか気にすることなく自動で防止してくれるのが便利です。
スムージング・モディファイアについてはこちらの記事をご参照下さい。
(D)プッシュ・モディファイア(Push Modifier)を使う
DAZ Studio 4.5で搭載されたモディファイアで、オブジェクトの頂点を法線方向へ移動させる効果があります。従来は全体に均一にかけるものでしたが、先日のバージョンアップによりウェイトマップによる効果範囲の指定ができるようになりました。
■ポークスルー補修法の比較
スムージング・モディファイアは便利なものですが、万能ではありませんでした。衣服のメッシュ密度よりも小さな突起には反応しなかったり、衣服の上下から挟み込まれると逆にポークスルーが発生してしまったり、両方含めて補修しようとしたりします。
自動で作用する分、細かい調節が効かないのです。
バージョンアップ項目にプッシュ・モディファイアにウェイトマップでの範囲指定ができるようになったというのを見つけて私が思いついたのは、ポークスルーの補修に使えないだろうかということでした。
プッシュ・モディファイアは全体を均一に膨らませるモディファイアですが、これにウェイトマップを使ってポークスルーしてしまっている部分だけにかければ良いのではということです。
今回は『Mila Dress for Genesis 2 Female(s)』を例にしました。

この衣服には最初からスムージング・モディファイアがかかっており、ポークスルーがなるべく起きないようにしてあります。
次の画像からはわかりやすいようにビューポートのDrawstyleをSmooth Shadedにし、肌を赤く色付けしてあります。
・ポークスルーに対処していない状態

薄い感じの生地の衣服ですので、ポーズによってはポークスルーが起きてしまいます。
この状態に各ポークスルー補修法を使うと、どの程度補修できるのかを見てみましょう。
・補修モーフを使った状態

FBMThinkenというモーフが用意されており、ShapingタブまたはParametersタブでそのプロパティを調節することで、全体的に衣服が身体から浮くようになっています。
ポークスルーは補修できますが、他の部分でも肌と衣服の間の隙間が広がり、肩ひもまで浮いてしまうのが目立ちます。
・スムージング・モディファイアをかけた状態

ポークスルーが起きている箇所を自動的に補修してくれます。
※この衣服はこの状態がデフォルトです。
ただ、腰に手を当てたポーズだったりすると、上の画像のように指に押されてポークスルーが起きてしまったり、下の画像のように指も含めて衣服に覆われてしまったりします。

・従来のプッシュ・モディファイアをかけた状態

全体的に膨らむため、衣服のふちや立体的な(メッシュによる)装飾部分、肩ひもなどのボリュームが増してしまっています。この、「プッシュ・モディファイアをかけた状態」と「補修モーフを使った状態」の違いは、その特徴を知る上で重要です。
・ウェイトマップド・プッシュ・モディファイアをかけた状態

プッシュ・モディファイアをポークスルーが起きている部分に限定してかけることで、丁寧な補修をすることができます。
ただし、プッシュ・モディファイアの特性から衣服のふちや立体的な装飾部分の補修はできません。
■ウェイトマップド・プッシュ・モディファイアを使ったポークスルー補修法
では実際に、ウェイトマップを使ったプッシュ・モディファイアを衣服に適用する手順をご紹介します。
途中の画像にはポイントを分かりやすくするためにビューポートのDrawStyleをSmooth Shadedにしたものがあります。

最初は上の画像のような状態です。腰の左側とお尻付近にポークスルーが起きています。
※すでにスムージング・モディファイアをオフにしてあります。
(1)衣服をSceneタブなどで選択した状態で、メインメニューから Create > New Push Modifier Weight Node を実行します。

※すでに衣服にスムージング・モディファイアが適用されていた場合は、Parametersタブでそれ(Enable Smoothing)をオフにしておきます。
(2)オプションウィンドウが出現しますので、そのままAcceptボタンをクリックします。

「Push Modifier Weight Node」が衣服にペアレントされた状態で作成されますので、Sceneタブでそれが選択されていることを確認しておきます。

(3)メインメニューから Tools > Node Weight Map Brush を実行してウェイトマップブラシツールを装備します。

(4)その状態でTool Settingsタブを開くとウェイトマップ関係のプロパティや、ブラシのオプションが表示されます。そこで、下段のWeight Mapsタブの「Add Map」ボタンをクリックします。

オプションウィンドウが出現しますが、そのままOKボタンをクリックします。

これでプッシュ・モディファイアにウェイトマップが割り当てられ、ビューポート上の衣服がその効果で膨らみます(ウェイトマップが全て100%で塗りつぶされるため)。


(5)ビューポート上で右クリックをして出現するメニューから Geometry Selection > Select All を実行します。

これで衣服のポリゴン全部が選択されます。

(6)ビューポート上で右クリックをして出現するメニューから Weight Editing > Fill Selected を実行します。

塗りつぶすウェイトを設定するウィンドウが出現しますので、0.0%にしてAcceptボタンをクリックします。

これで選択したポリゴンがウェイト0%で塗りつぶされ、膨らんでいた衣服が元に戻ります。

(7)ビューポートの衣服の上でマウスドラッグすることでウェイトマップを描くことができますので、ポークスルーが起こっている場所を塗ります。
※ウェイトマップ・ブラシツールのブラシオプションなどについてはこちらの記事をご参照下さい。

弱めのブラシで滑らかになるように塗り重ねていくのは難しいので、強めのブラシでざっくりと塗り、それをスムースブラシやスムージング(Weight Editing > Smooth Selected)で滑らかにならすのがオススメです。
※初期設定ではウェイトが高くなるにつれて [黄→青→赤]と色が付き、ウェイトが高いほどプッシュ・モディファイアの効果が強くかかることになります。

(8)元のカメラから見て変に膨らんでいたり、ポークスルーが残っていたりしないことを確認します。
そのままでは少し膨らみすぎていたので、衣服を選択してParametersタブのGeneral > Mesh Offset > PushModifier (ウェイトマップ名)の数値を0.6に下げました。このプロパティはウェイトマップ全体の強度に掛け合わせられるようです。

■今日の一枚
ウェイトマップド・プッシュ・モディファイアで補修することで、無事衣服のポークスルーも消すことができましたので、レンダリングして仕上げました。

Character: | Lily , Pretty Hands Poses and Nail Colors for Genesis 2 Female(s) |
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Hair: | Jewell Hair |
Costume: | Mila Dress for Genesis 2 Female(s) |
Environment & Light: | Boudoir Photo Studio and Lights , Boudoir Photo Studio Add-On |
今回の画像の素材はこちら
![]() Lily | ![]() Mila Dress for Genesis 2 Female(s) | ![]() Jewell Hair | ![]() Pretty Hands Poses and Nail Colors for Genesis 2 Female(s) |
![]() Boudoir Photo Studio and Lights | ![]() Boudoir Photo Studio Add-On |