『Sketchy - Toon Edge and Art Style Shaders for Iray』はIrayレンダラーで非写実的なレンダリングをしてしまおうという、とっても野心的なDAZ Studio用カスタムアートシェーダーです。このシェーダーを適用すると、フォトリアリスティックがウリのIrayでアウトラインシェーダー及びスケッチスタイルシェーダーを実現する、非常に興味深いレンダリングができます。
※記事で扱うシェーダーやライトセットその他について、有効なレンダラーを明示するようにしました。過去の記事の内容についても調べがつき次第、追加していく予定です。
■スケッチスタイルシェーダーとしての使い方 『Sketchy』には、オブジェクトのアウトラインを描画するアウトラインシェーダーとしての働きが基本にあります。そしてそれを拡張する形で、ブラシやトーンのパターンを載せるスケッチスタイルシェーダーとして働くようになっています。
今回はこんなシーンを用意しました。ライティングは初期設定の環境ライティングと左上手前からのスポットライト1灯だけです。
(1)まずはこのシェーダー用のライティングにします。
Content Libraryタブの DAZ Studio Formats>>Shader Presets>Dimension Theory>IrayToonShader または
Smart ContentタブのProductsページ(Filter By Contextのチェックを外す) Shader Sets>IrayToonShader>Sketchyを開き(以降は
Content Libraryタブの方で説明します)、「DTTS - Lighting Gradated」をダブルクリックして適用します。「DTTS - Lighting Solid」でもOKです。


これは環境ライティング用のHDR画像を適用するもので、全方位からの光(Gradatedは地平線より上のみ)でシーンを照らします。明るさはほぼ白のサーフェイスがEV13で白飛びするくらいです。
(2)シェーダーを適用します。
Sceneタブで適用したいオブジェクトを、
Surfacesタブで適用したいサーフェイスを選択した上で(両方とも複数選択するのが楽です)、
Content Libraryタブの同じ場所にある「DTTS - Iray Toon Shader Base」を適用します。

オブジェクトのアウトラインが黒く描かれました。
アウトラインの太さを変更したいときは、
Content Libraryタブの同じ階層にある 04 Toon Outline Modifiers を開き、「DTTS - 02 Toon Outline Edge Strength ~」のいずれかをダブルクリックして適用します。
(3)今度はスケッチスタイルシェーディングを適用します。
Content Libraryタブの同じ階層にある 01 Full Shaders を開き、「DTTS - 02 Full Shader Sketch A」をダブルクリックして適用します。

右上から左下方向へのハッチングを施したような効果が付加されます。
画像で服の模様が拡大されたのはテクスチャの繰り返しがリセットされたからで、服と髪の色が変わったのはDiffuse Colorが白に上書きされたからです。プロパティ自体はあるので、数値を設定しなおせば直ります。
(4)サーフェイスのベースカラーを変更してみます。
Content Libraryタブの同じ階層にある 02 Solid Color Diffuse を開き、サムネイル画像の色を参考にダブルクリックして適用します。

髪と服に「DTTS - 02 Solid Diffuse Color B」を使いました。この時、オブジェクト単位で変更する場合は
Surfacesタブの選択状態をそのままにしておいて、
Sceneタブの選択のみ変更するとスムーズです。
(5)スケッチパターンを変更してみます。
Content Libraryタブの同じ階層にある 01 Full Shaders を開き、サムネイル画像を参考にして適用します。
スケッチパターンの精密さを変更したいときは、
Content Libraryタブの同じ階層にある 05 Draw Styles を開き、「DTTS - 03 Draw Style Scale ~」を適用します。

服に「DTTS - 05 Full Shader Cross Hatch A」を使いました。色が白に上書きされるので、再び
(4)を適用しました。
スケッチパターンの変更には、05 Draw Styles の方にあるものでも構いません。
キャラクターは一段階細かく、背景の方には荒くなるものを適用しました(説明は省いていますが、背景に置いたオブジェクトにもシェーダーを適用しています)。
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最後に細かい調整を施して仕上げたのが次の画像です。

Character: | Tamara for Genesis 3 Female |
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Hair: | Tamara Hair for Genesis 3 Female |
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Costume: | Tamara Clothing and Accessories for Genesis 3 Female(s) |
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Shader: | Sketchy - Toon Edge and Art Style Shaders for Iray |
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このアウトラインが黒いのは実際のところ変えようがないので、他を派手目の配色に変えてあります。
次の画像のように漫画みたいなトーンを施すこともできます。テクスチャをはがしてしまったのでまゆげが無いです^^

スケッチパターンには他にヘックス、サークル、レンガ、ドット、十字、ライン、グリッド、ピクセルがあります。また、このシェーダーにはほぼ同じ働きをする2つのレイヤーが備わっているため、これらをミックスして適用することができます。
Irayレンダラーでこんな非写実的なレンダリングができるというのが他にない特長ですね。トゥーンシェーダーとして見ると機能不足が目立ちますが、スケッチスタイルシェーダーとしてはいろんなスケッチパターンが用意されているので、特性を理解すれば十分使えるものになっていると思います。ちなみにスケッチパターンのプリセットは74個含まれています。
■使う上での注意点 ・トゥーンシェーダーとしては、階調の単純化はできませんが、黒いアウトラインを付加することができます。
・アウトラインやスケッチパターンの色は一応変えられるプリセットがありますが、真っ白や真っ赤などにできるのみで、基本真っ黒と考えた方が良いです(微妙な色に変えられる方法があればコメントいただきたいです)。
・スペキュラのプロパティもありますが、あるだけです。トランスルーセントやSSS、トップコートに関するプロパティはありません。
・ライティングは前述の通り真っ白なIBLが基本で、スケッチパターンの現れ方はあまりライティングと関係ないようです。
・保存したシーンを読み込んだ時にスケッチパターンがなくなっていた場合は、スケッチパターンの精細さを変更するプリセット「DTTS - 03 Draw Style Scale ~」を適用して下さい。
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